一番
時は春。天守近くの広場では、桜の花でしょうか、花を楽しみながら宴会が催されています。
さあ、飲め飲めと盃を飲み廻しながらの大宴会が開かれています。
その盃に大木となった松の枝の影が映っています。
大木の松の枝をぬって差し込んできている月の光を浴びながらの飲めや歌えの大宴会。
昔はそのような栄華を誇っていたのであろうけれども今はその影は全く残っていない。
昔は、城主は天守に、兵士は広場に居て、ご婦人たちも一緒での大宴会が催されるほどの栄華を誇っていたでしょう。
しかし今、昔の華やかで平和な栄華はどこに行ってしまったのだろうか。
二番
時は秋。秋とは言っても夜は冷え込み、霜が降りる時期なので、月の光でピリピリとした雰囲気になっています。
その輝く月の光は、群れをなして飛んでいく雁(かり)の数を数えられるほどに澄み切って強く輝いていた。
そんな月の光の下で、いざ出陣と言う強者たちの振り上げる刀やときの声は山々にこだまし、その剣はまるで林のようであり、月の光はギラギラと照らし出していた。
しかし今その姿はどこにも見当たらない。
強者たちをこんなにたくさん集めている城主は大変な権力を持っていたことでしょう。
しかし今、昔の盛者の権力はどこに行ってしまったのだろうか。
三番
荒れ果てた城跡に昇る月の光は昔と変わらず輝いているけれども、誰のために輝いているのだろう。
城跡にあるのは石垣に生い茂る葛(かずら)と、ひゅうひゅうと松を切る風の音だけだ。
月の明りは今も昔と変わらないけれども、昔の栄たころの面影も盛者としての権勢の姿も、今は何一つ残っていない。
月は何のために今も照っているのだろうか。
四番
自然のなすことは今も昔も変わらないが、
栄えたり滅んだり、移り変わるのがこの世の習いである。
そのことを鏡のように見せようとして、今も月は輝き続けている。
荒れ果てた城を照らしている夜の月よ。
自然の力は変わらないけれども、人の世は移り変わるものであるということを知らせようとでもしているがごとく、荒れ果てた城の上に今も月が輝いている。
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