沙羅双樹

花の色の変化を荒城の月は暗に読み込んでいます
   

沙羅双樹の花の色

沙羅双樹と言うのは2本の木の意味かと思っていましたが、サラソウジュと言う名前の木もあるのです。その花の色の変化を荒城の月は暗に読み込んでいます。
「栄枯は移る世の姿」と言う四番の歌詞の所です。
「栄枯は移る」というのは「盛者必衰」を表しますので、平家物語の「沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をらわす」につながるからです。

沙羅双樹はどんな木で、どのような花の色なのか、またその花の色の変化について記してみます。

サラソウジュと言う木は、幹高は30mにも達する大きな木です。
春に花を咲かせ、ジャスミンにも似た香りを放ちます。
耐寒性が弱く、日本では温暖な地域の仏教寺院や植物園に植えられている程度で一般にはあまり見られません。

サラソウジュは仏教と深いつながりがあります。
二本並んだ沙羅(さら)の木の下で釈尊が亡くなられたしたことから、沙羅樹(さらのき)は沙羅双樹(サラソウジュ)と呼ばれるようになったのです。
確かに2本並んでいたため双樹となったわけですが、2本づつ両側にあり、合計4本だったという説もありますし、両側に2か所づつそれも2本づつあり、合計で8本だったという説もあります。
沙羅木が最初であり、これが2本セットになっていたのだと推定されます。何か所だったのかはよく分かっていません。

さて、その花ですが、淡いクリーム色の花です。
少しオーバーな表現かもしれませんが、4本か8本の沙羅木を林と言っているようです。

釈尊が亡くなられたとき、たちまちに枯れ、白色に変じ、その林はさながら白い鶴の群れのごとくであったと言われます。

このことから平家物語では、沙羅双樹の花の色は盛者必衰を表すとされ、荒城の月では、栄枯は移るとされていると私は解釈しています。
仏教でいう沙羅双樹の花の色の変化は釈尊の亡くなられたことを悲しんでいる様子を示し、平家物語では輝いていた花もやがて枯れるように表現され、荒城の月では栄華もいつかは衰えると表現されているようですが、いずれも同じことを言っています。
つまり、常にいつまでも咲き誇っていられるものでないということにおいて共通した意味を持っていると私は解釈しています。

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